まめちら

老眼、目の病気、ロービジョン(弱視)などの様々な「見えにくさ」に、あらゆる対処法を提案

全スポ出場の権利を視覚障害者の私が手放した本当の理由

全国障害者スポーツ大会

全スポとは全国障害者スポーツ大会のこと。
全国障害者スポーツ大会とは、全国の都道府県・指定都市選手が参加し実施される、国内最大の障害者スポーツの祭典のこと。

視覚障害者になって運動を始めた私は、色々なスポーツがあることを知り、何をやっても楽しく、ある種目の大会に出場することを決めました。
全スポの予選も兼ねた大会でした。
いつも考えが浅い自分の欠点なのですが、「どうにかなるだろう」と思ったのですよ。

予選…会場が…分かりません

それまでは障害者スポーツ施設で親切な職員さんたちの下で快適に安全にスポーツをしていたわけですが、大会参加は一人でのこと。
会場への交通案内は調べ尽くしたからクリアできたものの、さて、敷地内に入ったら入り口が分からない。
歩き回って探し回ってようやく内部に入れたものの、今度は更衣室やロッカーのある部屋の場所が分からない。
聞きたくても人もいない。
もうこの時点で時間も40分以上費やし、体も心もヘロヘロ。
それでもどうにか行きついて着替えて間に合ったのですが。

やっと見つけた集合場所からの移動も何もかも、[オトナ・初参加・視覚障害者]には分からないことばかり。
競技の正式な記録を計ってもらえたことは収穫でしたが、それ以上に見えないことでの難しさに打ちひしがれた疲労感の方が大きいものとなってしまいました。

全スポ参加申し込み

障害者スポーツは障害の程度が様々なので、本当に平等に競うことは不可能。
そのためか、全スポの参加資格も成績順に選ばれるわけではなく、初参加の人は選ばれることが多いようです。
(*競技によっては純粋に成績で選ばれている物もあります)

そんなわけで、私にも選考合格通知と申込書が届きました。
先の大会で散々苦労したくせに、基本的に「どうにかなるだろう」という信条とアホのため、調子に乗って参加に前向きな気分になっていました。

そしてルーペ片手に書類を手に取り、申込書を書き始めたのですが…

とにかく記入項目が多い、その欄が小さい、字も小さい、枚数も複数。
中心視野が欠けている私は、欄内にきちんと書き入れることができず、申し込み用紙はどんどん汚く恥ずかしいものになりました。
(目が悪くなる前は「見やすく書く」ことはポリシーでした)

見えないし書けないし、首も肩も痛くなるし、どうにか書いた紙は汚い字とはみ出しばかり。
もう辛くてくたびれて、パラパラと紙をめくったら、余白が大きな紙が1枚出てきました。
それは、参加辞退の申し込み用紙でした。
白い大きな余白が、砂漠の中のオアシスのように見えました。
「これなら書ける!書けるわ!(目に涙と星)」と、疲れ切った私はその書きやすくて項目のほとんどない辞退の用紙に記入を始めました。
そして提出しました。

辞退の理由

後日、辞退の確認や理由を問う電話連絡を受けました。
ここで正直に「読めないし書けなかった」と言えばよかったのに、クレーマーと思われるのも嫌で、当たり障りなく体調を理由にしました。
本当の理由を言えば良かったのに、つくづくバカだなと自分で思います。

視覚障害者の参加は私一人ではないはずだけど、他の人たちは一体どうやってるんだろう?
障害認定の一級、二級ならば、たぶんヘルパーさんとかの助けを借りることが出来そうですが、三級以下でも私のように読めない・書けない人はいるのに。
これが一般社会の事柄ならば、出来なくて当たり前で大人しく諦めるのですが。
障害者のイベントなのに全然バリアフリーじゃないやん、って当時は悲しい気持ちになったのでした。

まあでもその後「合宿」だの「結団式」だの色々あることを知り、私には合わないから参加しなくて良かった〜とホッとしたのですけどね。

でも参加した友人がその体験を語る様子がとてもキラキラしていて、素敵だなと思ったのでした。