iPadやiPhoneは拡大読書器として使えるか?(前)
ITを味方に
拡大読書器とは、カメラで捉えた映像をモニタに拡大等して映し出すことが出来る、視覚障害者の日常生活用具として認められている視覚支援機器です。(上画像は一例)
名称に「読書」とありますが、読書だけでなく…
- 書類の記入、ハガキ書き
- 商品説明等を読む
- 自分の顔を見る*
- 刺さった棘を探す*
- 離れた壁に書いてある物事を見る・探す*
など、日常のあらゆることに使える「拡大機器」なのです。
(*については、機種の形状による)
前半のこのページでは、
iPhoneとiPadを例に、スマホやタブレットを拡大読書器のように使って
読書が出来るか?
を見てみたいと思います。
読書が出来るか 1.文庫本などの場合
まず大前提として、据置形の拡大読書器の多くには
XYテーブル
というのが付いていて、縦や横にブレずにまっすぐ動かすことができます。
そのおかげで、例えば縦書きの本を読む際は、横のブレがなく縦に滑らせて読むことができます。
ですが、iPhoneやiPadではそれができません。
(アイディア豊富で器用な人ならば、日曜大工で何か作れそうな気もしますが…)
なので、そもそもが圧倒的に不利なのですが、それでもiPhoneやiPadを拡大読書器のように使って本が読めるかどうかを試してみます。
iPadで試す
下の画像は、文庫本をiPadに映した様子です
- iPad 10.2インチ
- Lomicallのタブレットスタンド
- アプリ「明るく大きく」
を使用しています。
本の1ページ全体が画面に入っています。
画像左は映しただけ、中央は白黒反転、右はコントラストを上げた状態です。
文庫本→iPad画面
の大きさに拡大されるので、このサイズの文字で見える人には有効なのではないでしょうか?
次に、下の画像はそれぞれ10倍、20倍にしたのです。
明るさやコントラストなど、何も調節していない状態なので、実際には調節してもっと見やすくできます。
ただし…
文字は見えるようになっても、読書となるとかなり厳しいです。
一度に数文字しか映らないので、頻繁に本またはiPadを動かすことになります。
が、拡大された画面が常に動くことになるので、多くの人はあっという間に疲れると思います。私も無理です。
iPhoneで試す
何しろ画面が小さいので、スマートフォン単品で使うのは難しいかと思います。
iPadの項で試したように、「明るく大きく」などのアプリで映して拡大して、スマホか本のどちらかを動かしながら見る…と言うことも不可能では無いですが、画面がものすごく揺れるので、読書はできないと思います。
では、望みが全くないかというとそうでもなく、例えば下の画像はiPhoneとMacをつなぎ、iPhoneの画面をパソコンの大きな画面に映し出した様子です。
画像全体は、パソコンの画面全体。
オレンジ色の点線で囲まれた部分が、パソコンの画面内に表示されている、iPhoneの画面です。
(iPhoneに、文庫本の1ページを映しています)
私の環境では無理ですが、モニターを簡単に縦方向に変えられる環境ならば、もっと画面いっぱいに表示できるのではないかと思います。
この方法については、下記のページで紹介しています。
読書が出来るか 2.雑誌、実用書などの場合
上の画像は、左の2つが実用書をiPadに映しているところ。
右は、比較として文庫を映したところを載せています。
本にもよりますが、実用書は文字が小さな島にまとまっているケースが割とあるので、行の端から端まで画面に収めても、文庫などより大きく表示できます。
なので、このくらいの大きさで見える人ならば、アリかもしれません。
ただ、何箇所も見たい場合(普通の読書はそうですが)、iPadを持ち続けたままあちこちを映すのは大変ですね。
iPadを机等と平行にアームなどで固定し、その下で、机に置いた雑誌を滑らせるようにして映す…という風に使えれば、そこそこ行けそうな気もしますが、試したことがないので、何とも言えません。
iPhoneではどうでしょうか?
iPhone標準アプリである「拡大鏡」などで、ルーペのように使うことは出来ます。
この方法は「読書」には厳しいですが、実用書の中の一部分だけを見たい・確認したいという時にはちょっと使えます。
結論
というわけで、次に違う使い方のアイディアを書きます。
違う使い方で読書を実現する
さて、iPadもiPhoneも、拡大読書器風に読書をすると言う点では、大きな期待できないような結果となりました。
しかし、アプリ等を使うことで、違う方法で読書は実現できます。
1.撮影して拡大&スクロール(iPad)
大変なので、個人的にはオススメではありません。
iPadの画面に、本の1ページが収まるように撮影し、画像(写真)として表示して、それを拡大しつつスクロールしつつ見ると言う方法です。
リアルタイムで、本かiPadのどちらかを動かしながら見るよりは、マシになります。
2.電子図書で見る
雑誌や実用書など、写真やイラストが多い本では無理ですが、文章が主体の読み物である本ならば、たいていは文字の大きさや配色を変更して見ることができます。
電子書籍にはなっていない本もありますが…
3.サピエの音声図書を聞く
視覚障害者ならば、手続きをすることで、音声図書のサピエを利用することができます。
私の読書のほとんどはこれです。
4.電子書籍を音声読み上げさせる
目で読むのが大変な場合は、オススメです。
私も愛用している方法です。
私の場合は、iPhoneとKindleアプリで、VoiceOverを使って読み上げてもらっています。
詳しくは別のページで紹介したいと思います。
5.オーディオブックで聴く
AmazonのAudible(オーディブル)や、オトバンクその他のオーディオブックを聞く方法です。
ただ価格が高かったり、読み方に癖がありすぎたりで、私は好きではありません。
無料お試し期間を設けているところもあるので、試してみるのはアリ。
6.読み上げアプリで聞く
私が知っている中では「Seeing AI」と言うアプリがお勧めです。
(文字も顔も物も色も教えてくれるアプリのページでレポートしています)
本のページを開いておいて、そこをカメラで写すと、それだけで読み上げてくれます。
この場合は、iPadよりもiPhoneの方が、軽くて小回りも利くので使いやすいと思います。
以上、このページでは、iPhoneとiPadを例に、スマホやタブレットを拡大読書器のように使って
読書が出来るか?
という観点で書きました。
次のページでは、読書以外の使い方はどうなのかを見ていきます。