大部屋入院中に見た、素敵な高齢夫婦

何度も入院して、いつも大部屋だったので、色々な出会いがありました。
中でも強く印象に残っている素敵な高齢のご夫婦がいらっしゃいます。

入院してきたその女性は、気取らず飾らず、朗らかだけれど決してうるさくなく、出会いの直後から打ち解けてしまう明るい人でした。
そして面白かったのが、
「主人が私の物真似をするんですよ」
と言いながら、そのご主人の真似をしてみせる…
つまり、「自分の真似をする夫の真似を実演」という、あまりお目にかかれない物真似を披露なさったことでした。

その時点でもうかなり面白い素敵な方だな…と思っていたのですが、少ししてご主人がいらっしゃいました。
ご主人も人の良さそうな、穏やかな印象で、まさにお似合いの好感夫婦だったのですが、私が感銘を受けたのはその後です。

当時は皆オープンにベッドのカーテンを開け放っていたので、見ようとせずとも見えてしまうわけなのですが、そのご夫婦はベッドに並んで座って一緒にテレビを見ていたのです。
・・・これ、何度も経験した入院生活の中で、後にも先にも他には一度もお目にかかったことのない光景。
普通は患者はベッドに、見舞客は椅子に座り、お互いが向き合うスタイルなのです。
だけどこのご夫婦は隣に並んでくっついて座り、同じ目線で、同じ物を一緒に楽しんでおられたのです。
私の目には、もはや双子のような、分身のような、片時も離れない同志のような、なにか特別に強い絆のようなものに見え、感動を覚えたのでした。

文章では何が特別なのかサッパリ伝わらないかも知れませんが、私にとってはとてつもなく魅力的なおばあちゃまだったのです。
こんな素敵な人といろいろお喋りしてみたかったし、たくさんお話を聞きたかったのだけど、その女性が入院してきた日は私の退院日なのでした。
たった数時間の出会いだったけれど、深く深く心に残った素敵なご夫婦だったのでした。